地球の歴史(年代別)の第二章です。最初からご覧になる方は「こちらの地球の歴史・Ⅰ」からご覧下さい。

地球の歴史・Ⅱ

酸素の発生

 

4.37~24億年前  この時代の地層に「縞状鉄鉱」が見られます。

  「縞状鉄鉱」は鉄とシリカをベースとした層が縞を描くように交互にできている地層です。
黒っぽい地層は「酸化された鉄」で出来ているので、25億年前に誕生したと言われるシアノバクテリアの発現前に酸素を供給する何者かが、存在したと考えられます。

1.太陽エネルギーによる酸素生成
海から蒸発し、大気の外縁に達した水分子は太陽の紫外線により水素原子と酸素原子に分解され、軽い水素原子は宇宙空間に散逸し、酸素原子が残り大気中に拡散しました。
ただし、この作用による量は現在の大気中の酸素の0.1%以下の弱い効果と見込まれます。

2.鉄を酸化する生物の存在
数十年前に、酸素を使わずに鉄を酸化する微生物が見つかりました。光のエネルギーを使って、鉄を酸化する能力を持っています。
この微生物は、光合成をするけれど、酸素は発生しない。37億年前の地球にこのタイプの微生物がいたとすれば、酸素のない時代に縞状鉄鉱がつくられたことが説明ができます。
37億年前〜32億年前、バクテリア、アーキア、真核生物という3つのドメインの共通祖先、つまり全生物の祖先から、一つの系統が酸素非発生型の光合成機能を持ちました。
分子時計解析でも、光合成に必要な色素のタンパクをつくる遺伝子が出現したのは、37億年前〜32億年前ぐらいで縞状鉄鉱の生成時期と一致します。
尚、アーキアは水素と二酸化炭素を使ってメタンを生成する能力を身につけました。
陸地が上昇し始め、気温差による微細粒子化と太陽光・風雨にさらされた陸地が風化し、リンをはじめとする栄養素が海に流れ込みました。リンを得て生物は、一気に増殖します。
しかし、生物のエサである電子源が不足し、鉄、硫黄、有機物などの電子源を必要とするので、生きるのが厳しくなります。
この電子源不足という環境に適応する光合成機能が2つ出現します。
水を電子源とする機能と、自分の中で電子をグルグル回す機能です。海には水がほぼ無限にあるので、水を使うことで電子源が補えます。
2つの機能を可能にした仕組み・光合成生物が光に反応する「反応中心」というシステムには、「系I型」と「系II型」の2種類があります。I型が古く、II型が新しいものでした。
祖先のI型は現代の反応中心と近い構造を持っていましたが、当時のII型はまだ始原的な・発展途上な構造でした。
I型は「アンテナ」と呼ばれる部品が光を集めて反応中心に送り込む形になっていますが、II型にはアンテナがなかったので、効率が悪かった。
しかしI型が持たない能力「電子源いらずの(電子をグルグル回す)光合成」を可能にしました。2つの反応中心は電子の受け取り方が同じなので(同じ電子伝達体を利用)お互いを補完することはできましたが、連動は当時できませんでした。

酸素を使わない光合成「I型」と酸素を発生する光合成「II型」。 したがって、酸素非発生型の光合成をする。一方、シアノバクテリア門は水を酸化する能力を身につけています。現存する光合成生物の祖先たちは、太古代後半の地球で生き残るために、そのどちらかを選択しました。
大陸が生まれて電子源が枯渇した時代には、自分で電子をグルグル回せるII型が適応的です。しかし生物が増殖するためにはエネルギーに加え電子もある程度必要なため、それだけでは効率が悪い。
本当はI型の力も借りたいところ。そこでII型が従来の電子の受け取り方を捨て、代わりに水から直接電子を獲得する能力をもつような進化が起こります
。 I型との連動もできるようになり、結果的にII型とI型を連動させ、水から酸素を発生させる光合成が誕生します。更にもともとII型にはなかったアンテナもI型から借りることで酸素発生能力も向上しました。
シアノバクテリアは自分で出す酸素を自分で使って酸素呼吸もできました。
その能力を取得するまでに、10億年かかったと言えます。

5.27億年前   

  それまでは、表面はほぼ海だった地球で、大規模な火山活動があり大陸が急激に成長します。
二酸化炭素も多く噴出しました。
大陸は熱循環が悪く、海洋より温まりやすく、冷めやすいので、岩石は細かく砕かれ、太陽による風化作用によって多くの金属イオンが海に溶け込みました。
雨に溶けた二酸化炭素が海に大量に供給された金属イオンと反応し炭酸塩鉱物として固定され沈殿しました。

6.25―20億年前 “大酸化イベント”と呼ばれる時期

  ストロマトライト(英: stromatolite)の化石が見られる。
ストロマトライトは藍藻(シアノバクテリア)類の死骸と泥粒などによって作られる層状の構造をもつ岩石のことである。
特に、内部の断面が層状になっているものを指す。大量のぶつぶつがあるように見える。
25億年前以降の地層からは世界中で発見されていて、海中に酸素が溶け込み始めたと考えられている。
シアノバクテリアは自ら水を酸化する能力を身につけていて、 陸地と海洋の間の浅瀬の至る所にシアノバクテリアは繫栄し、今でもオーストラリアの遠浅の海岸線に生息しています。
シアノバクテリアの光合成活動は非常に活発で、現在の大気酸素量の数倍から20倍という膨大な酸素が放出された「大酸化イベント」と呼ばれています。
放出された酸素は、海にも溶け込み、海洋中の金属イオンを酸化します。
世界中にあるる鉄鋼床は、海水中の鉄イオンが酸化され、鉄さびになって沈殿した証拠と考えられています。
「大酸化イベント」は、当時の既存の生物にとって猛毒ガスイベントのような大事件でしたので、 当時繁栄していた嫌気性原始的生物にとっては猛毒であり、生態系は一変しました。
「大酸化イベント」により、大気中の二酸化炭素は酸素に置き換わり濃度が大幅に低下します。二酸化炭素による温室効果が短期間に激減、地中全体を寒冷化しました。

7.24~22億年前     1回目の全球凍結/h4> 6.の大酸化イベントにより、二酸化炭素のほとんどが酸素に変換され温室効果は大幅に弱くなります。
また、超大陸の出現によって太陽光の吸収が高まりますが、夜との寒暖差が広がり、陸地の風化が進み、大量の金属イオンが海に流れ込み、海で二酸化炭素の固定化が進みます。
二酸化炭素の酸素への置き換えで、温室効果が弱まるにつれ、気温が下がり空気中の水蒸気が雨や雪になる事で水蒸気も減り、水蒸気の温室効果も下がっていきます。
やがて、地球全体が氷に覆われる全球凍結に至りました。

全球凍結からの復帰

22億年前から、氷の世界でも活動を続けていた火山活動により二酸化炭素は供給されていました。
海も地表も凍り付き、二酸化炭素を吸収し、酸素を放出する作用が無いので、二酸化炭素の温室効果は弱まる一方でした。
この効果により、赤道付近から氷は徐々に溶け始めます。

全球凍結(地球の特徴)に詳細


 

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地球を学ぶ高い志を掲げ、年代順履歴書風に書こうとしましたが、複雑な理由と関連についてうまく説明しきれません。
そこで、地球の歴史(年代別)と地球の特徴(特異性とその理由)に大別しました。
今迄にも、考古学的な新しい発見で教科書が書き換えられた通説も少なくありません。
46億年の地球の履歴書には、まだまだ新たな推理が織り込める余地もあります。
楽しみましょう。

地球の歴史目次

地球の歴史・Ⅰ

誕生

1.138億年前    宇宙の誕生

2.46~45.5億年前  地球と月の誕生

3.41~38億年前   後期重爆撃期


地球の歴史・Ⅱ

酸素発生

4.37~24億年前  地層に「縞状鉄鉱」

5.27億年前    大規模な火山活動

6.25~20億年前  大酸化イベント

7.24~22億年前   1回目の全球凍結

 

地球の歴史・Ⅲ

陸地の移動

8.25~15億年前     コロンビア超大陸が生まれた

9.11~7.5億年前    ロディア超大陸第二世が生まれた

10.7億年前        2回目の全球凍結

11.6億年前  3回目の全球凍結

12.全球凍結の融解からのカンブリア爆発

13.2.5億年前     バンゲア超大陸第三世が生まれた

13.-2 2億年前         パンゲア大陸が分裂を開始する

14.17000万万年前    インド亜大陸ユーラシアに衝突

地球の歴史・Ⅳ

15.6500万年前      巨大隕石ユカタン半島に衝突

16.4500万年前      ヒマラヤ山脈が出来る

17.1500万年前      南極大陸が氷床に覆われる  

18.1000~500万年前   アフリカに大地溝帯形成始まる

19.260万年前~現在    第四紀氷河時代継続中

地球の特徴目次

地球の特徴

太陽の恵み

水の惑星

陸の移動

しっかりした大地も、長い目で見ると大きく位置を変えています。その原動力を尋ねます。

二酸化炭素

地球の大気中にわずか0.032%含まれる二酸化炭素、21%の酸素と置き換わると大変な事になります。

全球凍結

地球全体が凍り付きスノーボール状態になることを言います。
22億年前、7億年前、6億年前の過去3回発生。

太陽風

紫外線、放射線を含む生物を脅かす、強いエネルギーを持つ太陽風が絶え間なく、降り注いでいる。

        

定期的な気候変動

気温変動

10万年ごとに繰り返されるサイクル