全球凍結とは、地球表面がほとんどすべて凍りついてしまうという気候状態、その規模や影響から言って地球史の中でも大きな出来事でした。
全球凍結は、今から約22億年前、7億年前、6億年前の少なくとも3回生じたと考えられています。

地球は水蒸気と二酸化炭素による温室効果が無くて、太陽のエネルギーだけの熱収支(太陽エネルギー約3割が反射され残りの部分対、夜と極地の地球放射熱)では地表の温度は-18℃になると言われています。
平均的な大気温度は15℃くらいですので、現在温室効果は33℃分あると言えます。
水蒸気と二酸化炭素による現在の温室効果はそれぞれ2分の1、3分の1とされていまが、今、二酸化炭素の大気中濃度は僅か0.032%しかありませんので、その力は巨大です。
また、今地球の酸素の濃度は21%ですが、これは光合成によって二酸化炭素が酸素に変換された結果ですから、二酸化炭素の温室効果力を酸素で食い止めていると言えます。
地中に固定していた石炭と石油、焼き畑農業や山火事で炭素を燃やし二酸化炭素、宅地化・工業化で緑を減らしています。人が自然界に無い活動を続けているかぎり、やがて恐ろしい事態を招きます。

二酸化炭素を減らし地球を冷やしたメカニズム

二酸化炭素を固定化して石に

二酸化炭素はほとんどの太陽系惑星で観測されていますが、液体の水と大気中の酸素は地球だけで、他の惑星では見つけられていません、
27億年前、表面はほぼ海だった地球で、大規模な火山活動があって大陸が成長します。
当時の大気の二酸化炭素濃度は高かったので、温室効果で温度が上がり、海から多くの水蒸気が上がり上空で冷えて雨となり地表を冷やします。
大陸は熱循環が悪く、海洋より温まりやすく、冷めやすいので、岩石は細かく砕かれ、太陽による風化作用によって多くの金属イオンが水に溶け、最終的に海に流れ込みました。
雨に溶けた二酸化炭素は金属イオンと反応し結晶化、海でも大量に流れ込んだ金属イオンと反応し炭酸塩鉱物として反応し沈殿しました。
25~15億年前、全ての陸地が繋がりコロンビア超大陸が生まれました。
大陸の赤道下では、暖められ上昇気流が発生、水蒸気の発生が抑制され、徐々に乾燥し砂漠化、水蒸気の温室効果が軽減します。

紫外線による水の分解

水蒸気の一部は上昇を続け、太陽の強い紫外線を浴びます。水分子は水素と酸素に分解され、軽い水素だけが地球の重力から逃げていき、重い酸素が残ることで大気の酸素濃度が高まります。
しかし、多くは大気中の一酸化炭素と反応し二酸化炭素にほぼ費やされ、大気の酸素形成は極僅かと推定されています。

微生物による鉄の酸化

37~24億年前の地層から「縞状鉄鉱」が見られる。縞状鉄鉱は酸化鉄とシリカをベースとした層が縞を描くように交互にできている岩石です。
酸素形成の主役であるシアノバクテリアは自身でも酸素を活動や成長に利用する高度に進化した原核生物ですが、誕生は25億年前と言われています。
37~25億年前まで、シアノバクテリア誕生以前に鉄を酸化させた何らかの微生物がいたようです。
鉄バクテリアは、水溶性の二価の鉄イオンや二価のマンガンイオンを酸化するバクテリアの総称。土壌微生物の一種です。
鉄バクテリアは、実際に金属を食べるのではなく、金属の酸化を行い腐食させることによってエネルギーを得て生きているもの(鉄細菌、硫黄酸化細菌、硫酸塩還元菌、 鉄酸化細菌など)をさします
。 鉄バクテリアは、三価になった鉄イオンにより水酸化鉄の殻を作ります。これらはバクテリアの死と共に赤茶けた沈殿物となり海底に堆積します。
世界の大規模な褐鉄鉱による鉄鉱床は、長年にわたる鉄バクテリアの活動により生成されたものが多い。
土壌中に普遍的に存在して、水田の取水口付近、コンクリート構造物の漏水箇所など、湧水量及び移動量が少ない場所で大量に繁殖し、サビ色のドロドロとした沈殿物を生成します。
水面に鉄の薄い酸化被膜が浮くと自然光を屈折させて虹色に光り、これが油膜のように見えることから油の流出や投棄事故と誤解されることがありますが、自然界に存在するレベルであればバクテリアも沈殿物も人畜無害です。

大気中の酸素推移

1) 38.5--24.5億年前大気は無酸素状態で海中でバクテリアによる鉄の酸化沈殿が始まる
          縞状鉄鉱床が形成し始めた
2) 24.5--18.5億年前 進化したシアノバクテリアが海中に酸素を放出させ、鉄イオンを完全に沈殿
          海洋中の二酸化炭素は光合成によって急速に失われ、これを補うように大気中の
          二酸化炭素を溶かし込んで消費した。
          このため温室効果が減少し、気温が急激に下がったと考えられる
* 22億年前 最初の全球凍結状態 3) 18.5--8.5億年前 酸素が海から大気中に流出し始め、大地表面が酸化されオゾン層が形成される
4) 8.5--現在 大気中に酸素が徐々に蓄積される

大規模な鉄鉱床が19億年前以前に堆積し、その後は生成していないのは、シアノバクテリアの光合成で出来た酸素が当時海中に大量に溶解していた鉄イオンを酸化して不溶化・沈殿し尽くした結果と考えられる。
シアノバクテリア(cyanobacteria,藍藻(もしくはラン藻)とも呼ばれる)は、酸素を発生する光合成(酸素発生型光合成)を行う原核生物です。
水と光があればエネルギーが得られるので、当時の地球上で大繁殖したようです。また、真核細胞の祖先との内部共生によって真核細胞に取り込まれ、植物の葉緑体の祖先となったと考えられており、原核生物から植物に至る光合成の進化を考える上で、非常に重要な生物です。

ストロマトライト

ストロマトライトは現在でも特定の海岸などでも見られるが、光合成を行うシアノバクテリア(真正細菌)のコロニーが層状に発達してできとぃます。
シアノバクテリアの光合成は水中で光が十分届く浅瀬で行われるので、発生した酸素分子は海水に溶解して大洋中に拡散します。
酸素分子は強力な酸化剤なので、海中に溶解している Fe2+ を酸化して(電子を奪って) Fe3+ に変える。Fe3+ は水に対する溶解性に乏しいため(水酸化鉄参照)水酸化第二鉄Fe(OH)3として海水から析出して沈殿しました。
水酸化第二鉄が脱水すると赤鉄鉱Fe2O3となります。ストロマトライトは海岸に分布しているので、鉄イオンの酸化は浅海から徐々に進んでいったと考えられる。縞状鉄鉱床の産出状況からも、陸地から遠くない大陸棚や大陸斜面の広い範囲に沈殿したと推定されている。
最初の光合成の証拠として西オーストラリアの27億年前の地層から発見されたストロマトライトの化石がある。

当時の一般的な生物にとって酸素は細胞の構成物質を破壊する有毒物質でした。
徐々に増えてゆく酸素に対して、従来タイプの真正細菌や古細菌類は酸素の少ない場所に生息地を移すか、酸素への適応を迫られます。
海中の酸素が徐々に増えてゆくこの時期に、酸素の存在する環境に適応した真核生物が生まれました。
海に溶けた二酸化炭素を光合成で空気中の酸素に置き換える作用で空気中の二酸化炭素は急激に減っていきます。
二酸化炭素の温室効果が減ることで、地表の温度は下がります。海からの水蒸気のッ供給も減るので水蒸気によるオンスつ効果も減り、地表はますます冷えます。
約25―20億年前の“大酸化イベント”と呼ばれる時期には、光合成生物の活動が非常に活発になり、現在の大気酸素量の数倍から20倍という膨大な酸素が放出されたとも言われています。
二酸化炭素による温室効果が無くなり、気温は下がり雨は雪に変わります。雪の地表は太陽光をよく反射し、大陸の上昇気流は衰え周辺の雨量も減ります。海水温も下がり、水蒸気の蒸発も減ります。
水蒸気と二酸化炭素の温室効果を失うと地表は-18℃に向かって冷えていきます。

約22億年前最初の全球凍結が始まる

温室効果の減少により地球全体の寒冷化が始まり、極地から次第に氷床が発達していった。氷床が太陽光を反射したため一層の寒冷化を招いた。
地表が凍結している間は雨は雪となり、岩石の風化化作用は滞り、海への金属イオンの供給が無くなり二酸化炭素の炭酸塩固定化もありません。
氷の下で二酸化炭素の薄い海ではバクテリアの光合成も不活発でした。
一度加速した寒冷化は止まらず、最終的に厚さ約3000mにも及ぶ氷床が全地球を覆い、スノーボールアースに至った。この状態は数億年 - 数千万年続いたとみられる。

全球凍結からの帰還

凍結しなかった深海底や火山周辺の地熱地帯では、わずかながら生命活動が維持されていた。凍結中も火山活動による二酸化炭素の供給は続けられており、大気中の二酸化炭素濃度は徐々に高まります。
二酸化炭素を金属イオンと反応させ結晶化し沈殿する作用と酸素に変換する光合成変換作用が滞るので、火山から供給される二酸化炭素は空気中に溜まる一方になります。
現在の地球に見られるような液体の海は大気中の二酸化炭素を吸収するため、大気中の温暖化ガスの濃度はある程度に抑えられ温室効果による温度上昇も抑制される。しかし、全球凍結状態では海が凍り付いてしまうことから、二酸化炭素をほとんど吸収せず、火山から放出された二酸化炭素は海に吸収されることなく大気中に蓄積していく。
大気中の二酸化炭素濃度が一定比率に達すると、温室効果により地表の温度は高まり、分厚い氷床も解け始めます。
地殻の一部が露出すると太陽光の反射率が下がり、そこから地表の温度が上昇し始め、徐々に広がっていきます。
また、雪となって地表に落ちていた水蒸気は大気中に溜まり始め、温室効果は更に加速されました。
このため、二酸化炭素の濃度は約2000年間かけて最終的に現在の400倍程度に達したとされます。その大きな温室効果が大気の温度を最大で 100 ℃ 近く上昇させ、結果として平均気温は 40 ℃ 程度となって氷床が溶けだし、全球凍結状態から脱却したと考えられています。

気候の安定化

岩石にしみ込み凍り付いた水が溶ける過程で、岩石の風化が進みました。
温暖化した気候の影響により大規模な嵐や台風が頻発するようになり、海を攪拌し大量の沈殿物を表層部に舞い上げ、陸地から供給される栄養塩類と合わせ、バクテリアの光合成を激しく促しました。
スノーボールアース以前の光合成生物の酸素放出速度より遥かに速いスピードで酸素が放出されたため、大量の酸素が地球に蓄積したこの時期を酸素爆発と称します。
結果的に大気中の二酸化炭素が酸素に置き換わることで気温は安定化していきます

生物への影響

スノーボールアース中には極低温により生物の大量絶滅が起こっています。 放出された酸素は、生態系を一変させます(我々にとって必要不可欠な酸素も、当時繁栄していた原始的生物にとっては猛毒です)。
スノーボールアースの終了後、生き残った生物の適応拡散が生じ、酸素呼吸をおこなう真核生物の繁栄がはじまります。

二度目の全球凍結

平穏な気候が続きましたが、約7億年前また全球凍結します。
約11億年前から7億5000万年前にかけて現在の太平洋地域、やや南半球寄りに、ロディニア大陸が存在したと考えられています。
世界のほぼ全ての陸塊が集まってできた超大陸でした。
全球凍結はロディニアの大陸分裂が始まってから約5000万年後というのが現在の通説です。
多くの陸塊が集合したのは、プレートテクトニクスの働きによるものですが、陸の移動に書いたホットブルームの押し出す働きだけでは、1カ所に集合する事は考えられません。
先ず。ホットブルームが複数のプレートを押し動かし、プレートは同士が激しくぶつかり合います。
どちらも衝突した陸塊の下に潜り込まず、真下に沈降します。沈降は続き上下マントルの境も突き破り巨大なコールドブルームを生み出します。
長期にわたる巨大なコールドブルームの働きで、多くの陸塊が1カ所に引き寄せられたと考えられます。

超大陸コロンビア形成時と同様に、ロディニアが赤道付近に位置していたことにより、岩石の風化が進みます。
岩石と地層が地表に露出すると、太陽の光、水、大気に接し反応が始まります。
1.気温の日夜の変化で膨張、収縮し細かく砕かれる。
岩石を構成する鉱物はそれぞれ熱膨張率が異なり、同じ鉱物でも結晶方位ごとに熱膨張率が異なるので、鉱石粒子間の隙間が生じる
2.岩石の隙間に入り込んだ水が凍る事で堆積が9%膨張し、岩を砕く
3.水に溶けている二酸化炭素は炭酸イオン・重炭酸イオンとなり岩石の金属をイオン化して結晶構造を破壊する
雨水に空気中の二酸化炭素が溶け込み、水素イオンと重炭酸イオンが形成され、さらに重炭酸イオンは炭酸イオンを生じる
CO2+H2O→ H2CO3→ H+ + HCO3-
HCO3-→ H+ + CO3--
この為、雨水はpH5~7の弱酸性を示す。これが地表の石灰岩と接すると
CaCO3 + H2CO3→ Ca2- + 2HCO3-
但し、空気中の二酸化炭素の濃度が上がると、化学反応は上記の通り右側に進むが、
空気中の二酸化炭素二酸化炭素の濃度が下がると反応は上記反対左側に進む。
4.大気の酸素と反応し化学的変質が生ずる。
黄鉄鉱(FeS2)が酸化されると、水酸化鉄と硫酸になる。
4FeS2+15O2+14F2O→ 4Fe(OH)3+8H2SO3
5.岩石が弱酸性あるいは有機酸が反応し、アルカリ・アルカリ土類金属が水に溶け出し、 水が中性もしくはアルカリ性に変わると、Siが溶け出す
これ等の化学反応は雨量が多いほど促進されるので、気候により土壌の色が変わっている。
これ等の結果、岩石は長い時間をかけて粘土化する。粘土は不透水層として地下水を流したり、原油を貯留したりする。また、水を吸収すると膨張し、土砂災害を引き起こすこともある。

約7.5億年前コールドブルームが終了し、ロディニア大陸が分裂をはじめ、はゴンドワナ大陸と呼ばれるかなり大きな大陸と、シベリア大陸、ローレンシア大陸、バルティカ大陸と呼ばれる小さな大陸へと分裂したと考えられています。
分裂によりロディニア超大陸の中央部、赤道下で激しく風化した岩石ばかりの大地が裂け、海水が侵入しました。
風化した岩石の陸地に海が割り込んだため、岩石からカルシウムやマグネシウム等の様々な金属イオンが一気に海中に溶け込みました。
これらは海中の二酸化炭素と反応し結晶化し海底に沈殿します。
この作用で、海中の二酸化炭素濃度が下がると、空気中の二酸化炭素が補うように海に溶け込み、様々な金属イオンが無くなるまで反応は続きました。
空気中の二酸化炭素が急激に減少し、温室効果が下がり地表の温度は下がります。
海面の温度が下がると海からの水蒸気の発生が弱まり、水蒸気の温室効果も下がり、一層温度が下がります。
大気中の水蒸気は雪になって落ちます。陸塊を雪が覆うと太陽エネルギーが多く反射され、一気に地球全体が冷えていき、全球凍結が始まりました
全球凍結からの復帰は最初の凍結時と同様であったと考えられます。 原生代後期では一部の生物が海中の高濃度の酸素を利用し、細胞接着物質であるコラーゲンを産生することに成功。単細胞間の接合が促進され、多細胞生物が出現するようになった。

三度目の全球凍結

6億年前三度目の全球凍結が発生しました。
米ロチェスター大学nジョン・タルドゥーノ教授(地球物理学)らの研究グループは、ブラジルの斜長石に含まれる小さな磁性鉱物を分析し、5億9千100万年前から5億6千700慢年前までの2600万年間地球の磁場が現在の30分の1程度と非常に弱かったことを発見しました。
地球の磁場は太陽から注がれるプラズマ粒子などを防ぐ、バリアーのような役割があります。
このバリアーが一気に弱まったため、地球のオゾン層が破壊され、強い紫外線が全体に降り注ぎました。
陸上の生物のほとんどは紫外線にさらされ死滅しましたが、海の中では生物の種が爆発的に発生し、カンブリア紀と呼ばれます。
強い紫外線は地球大気中の水分子を水素と酸素に分解、軽い水素は地球の重力から逃げ、重い酸素が残り大気の酸素濃度が高まりました。
また、岩石の風化を促進し、海への金属イオンの供給を増やし、二酸化炭素の固定化を進めます。
また、光は届くが海による紫外線の影響を軽減された浅瀬のシラノバクテリアは光合成を続け二酸化炭素を酸素と自らの構造物に変換し続けます。
強い紫外線はシラノバクテリアを食す天敵を排除します。
紫外線の照射増からの作用によって、3回目の全球凍結が引き起こされたと考えられます。

約4億8830万 - 4億4000万年前頃にオゾン層が形成され生物の陸上進出が可能となる。
粘土に有機物が混じることで、土壌が形成される。
岩石から溶け出し、粘土化しなかった金属イオンは水に流され海に流され、化学反応して海底に沈殿する。
生物に取り込まれ骨や殻などになる。